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東京高等裁判所 昭和34年(く)115号 決定

少年 A(昭一四・一一・二四生)

主文

原決定を取り消す。

本件を東京家庭裁判所に差し戻す。

理由

本件抗告の理由は、B、C名義の抗告申立書に記載してあるとおりであるから、ここにこれを引用する。

少年保護事件記録及び少年調査記録によれば、少年は恐喝、同未遂、たばこ専売法違反等の非行をなしたので、昭和三十四年六月二十二日東京家庭裁判所において東京保護観察所の保護観察に付されたが、その後も素行改まらず、同決定の日から僅か二ヶ月余りにて又亦本件非行をなしたことが認められ、少年の性格、平素の行状は決して良好とはいえないし、本件非行の態様も非難されるに十分であるし、又現在の交友関係も少年に悪い影響を及ぼしこそすれ、決して好ましきものでないことは明らかである。かかる性格的欠陥を有する少年を一定期間少年院に収容してその欠陥を矯正せしめることは一つの適切な方法であることには相違ないが、少年の父は東京都○○局に勤務し○○○長として、児童の福祉、少年の善導補導に尽力しており母も亦教養低からざるところ、従来の少年に対する指導には誤りあることを痛感し、先ず悪友との交渉をたつためこの際少年を三重県在住の母の親戚に預けてその更生を図り、将来は少年のため懸命の努力をなすべくその覚悟を新たにしておることが認められるから、今少年を少年院に収容するより、慈愛ある父母の膝下に帰らしめ、一定の保護観察に服し、円満なる家庭の一員として、再思反省、自重、自戒の生活をなさしめる方が、この際少年のため最も適切妥当な措置と認められるから、結局本件抗告はその理由があることとなるので、少年法第三十三条第二項に則り主文のとおり決定する。

(裁判長判事 三宅富士郎 判事 東亮明 判事 井波七郎)

別紙一 (原審の保護処分決定)

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

(罪となるべき事実)

少年は、法定の除外の事由がないのに、昭和三四年九月一一日頃、東京都新宿区○○一丁目○○番地寿司屋大○こと○川○方で、匕首および刃渡り六〇センチメートル位の日本刀各一振を所持したものである。

(法令の適用)

銃砲刀剣類等所持取締法第三一条第一号、第三条第一項第一号、第二条第二項

(上記保護処分に付する事由)

少年は、一七歳頃から次第に怠学、不良交友、外泊、盛場徘徊を行うようになりその間恐喝、煙草専売法違反、恐喝未遂等の非行を重ねたので、昭和三四年六月二二日、当裁判所で、保護観察決定を受けたところ、その後も素行を改めることなく、無為徒食、盛場徘徊、夜遊、外泊、所持品の質入、不良交友、喫煙等をくり返し、又しても同決定を受けてから僅か八〇日ほどで本件非行を行うに至つたのである。ところで少年は、性格の面で、勤労意欲に欠け、気分易変性および意思欠如性が甚しく又環境の面で交友関係が極めて悪く(新宿の愚連隊との深いつながりがあり、これを断ち切ることは至難なことである)、これらに少年の上記生活史および非行歴等を考え合わすと少年の危険性は、高度で、とうてい在宅保護の措置ではこれを除くことはできないと認められる。そこで少年の年齢、危険性の程度、そのほか色々な事情を綜合したうえ、少年法第二四条第一項第三号を適用して少年を中等少年院に送致することとする。

以上の理由からして主文のとおり決定する。(東京家裁昭三四・一〇・一九決定裁判官石崎四郎)

別紙二 (差戻し後の検察官送致決定)(報告事件四号)

主文

この事件を東京地方検察庁検察官に送致する。

理由

調査の結果上記の者は既に満二〇年を超過しておる事が判明したので少年法第一九条二項により主文の通り決定する。

(東京家裁昭三四・一二・二二決定 裁判官 佐藤昌彦)

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